緊急事態宣言が出されたり、学校の休校があったりで、学生はしばらく今までどおりの体制で学校生活を送れない状況が続きそうです。
そんな中、以前から声もありましたが、学校の制度を海外に合わせて、9月入学制度に変えたらよいのではないか、という話が本格的になってきました。
これまで長い間4月入学に慣れ親しんできた日本人にとっては、大変大きな問題です。
誕生日での学年分けや、卒業式はどうなるのでしょうか。
世界や海外ではどうなっているのか、メリットやデメリットについても調べてみました。
Contents
9月入学制度になったら誕生日によって学年はどうなるの?
9月入学制度になった場合の誕生日による学年分けのしかたには、次の2パターンが考えられます。
・9月2日~翌年の9月1日生まれの人が同じ学年になる
・4月2日~翌年の4月1日生まれの人が同じ学年になる
順に説明します。
9月2日~翌年の9月1日生まれの人が同じ学年になる
9月2日~翌年の9月1日生まれの人が同じ学年になるようにすると、みんなが同じ年齢で卒業できますので、卒業の年齢については、現在の流れを引き継ぐことができます。
現行の制度では、4月2日~翌年の4月1日生まれの人が4月に入学・進級して3月に卒業という形です。
小学校を卒業する時は皆12歳、中学校を卒業する時は皆15歳と、みんな同じ年齢で卒業します。
この部分を引き継ぐ形にすると、9月2日~翌年の9月1日生まれの人が9月に入学・進級して8月に卒業という形になります。
現行では、1,2,3月生まれの人が、早生まれと言われてきましたが、そういう言い方はしなくなると思われます。
9月入学では、6,7,8月生まれの人が同じ学年の中で誕生日を迎えるのが遅くなります。
政府は5月19日、9月入学制について、2021年9月に移行する場合の 一斉実施案と 段階的実施案の2案を示しました。
この
は、「9月2日~翌年の9月1日生まれの人が9月に入学・進級して8月に卒業」という形をとっています。
この2つの案が実施となった場合、誕生日による学年分けのしかたがどうなるのか、説明します。
一斉実施案の場合
一斉実施案は、21年9月に14年4月2日~15年9月1日生まれの子どもが新1年生として小学校に入学する案です。
この場合、この学年の対象は17カ月分で、人数は通常の1.4倍となります。
現在の年中さんが、誕生日によって別の学年に分かれます。
現行制度の場合、2021年4月に入学する予定だった人は、2014年4月2日~2015年4月1日生まれです。
これが変更になることで、誕生日による影響は次のようになります。
誕生日 | 現行の入学時期 | 変更後入学時期 | 入学時期 |
---|---|---|---|
2014.4.2~2015.4.1 | 2021.4 | 2021.9 | 半年遅くなる |
2015.4.2~2015.9.1 | 2022.4 | 2021.9 | 半年早まる |
2015.9.2~2016.4.1 | 2022.4 | 2022.9 | 半年遅くなる |
2016.4.2~2016.9.1 | 2023.4 | 2022.9 | 半年早まる |
2016.9.2~2017.4.1 | 2023.4 | 2023.9 | 半年遅くなる |
2017.4.2~2017.9.1 | 2024.4 | 2023.9 | 半年早まる |
以降同じように続く |
2021年9月入学の学年は、
と問題が多くなります。
段階的実施案の場合
段階的実施案は、
21年9月入学を14年4月2日~15年5月1日生まれ
22年9月入学を15年5月2日~16年6月1日生まれ
というように、急激に人数が増えないようにしていき、25年まで5年をかけて移行する案です。
誕生日別にみると次のようになります。
誕生日 | 現行の入学時期 | 変更後入学時期 | 入学時期 |
---|---|---|---|
2014.4.2~2015.4.1 | 2021.4 | 2021.9 | 半年遅くなる |
2015.4.2~2015.5.1 | 2022.4 | 2021.9 | 半年早まる |
2015.5.2~2016.4.1 | 2022.4 | 2022.9 | 半年遅くなる |
2016.4.2~2016.6.1 | 2023.4 | 2022.9 | 半年早くなる |
2016.6.2~2017.4.1 | 2023.4 | 2023.9 | 半年遅くなる |
2017.4.2~2017.7.1 | 2024.4 | 2023.9 | 半年早まる |
2017.7.2~2018.4.1 | 2024.4 | 2024.9 | 半年遅くなる |
2018.4.2~2018.8.1 | 2025.4 | 2024.9 | 半年早まる |
2018.8.2~2019.4.1 | 2025.4 | 2025.9 | 半年遅くなる |
2019.4.2~2019.9.1 | 2026.4 | 2025.9 | 半年早まる |
2019.9.2~2020.4.1 | 2026.4 | 2026.9 | 半年遅くなる |
2020.4.2~2020.9.1 | 2027.4 | 2026.9 | 半年早まる |
以降同じように続く |
段階的に移行することで、急激な人数の増加はなくなり、26年度以降の小学1年生は
「9月2日~翌年9月1日」生まれの満6歳11カ月~満6歳の児童
の状態に戻ります。
しかし、幼稚園・保育園の卒業時期に関して、人により待機の状態になったり、早めに卒業しなければならない状態になるので、対応が必要になります。
4月2日~翌年の4月1日生まれの人が同じ学年になる
学年の切り替わり時期だけを9月にずらして、4月2日~翌年の4月1日生まれの人を同じ学年にしたまま、9月に入学・進級して8月に卒業という形も考えられます。
この場合は、誕生日によって卒業時の年齢が異なってきます。
小学校卒業時の年齢は、
4月2日~9月1日の人は13歳
9月2日~9月1日の人は12歳
中学校卒業時の年齢は、
4月2日~9月1日の人は16歳
9月2日~9月1日の人は15歳
となります。
この案も検討はされていましたが、この案では、入学の時期が最も遅い場合、7歳5カ月までずれ込みます。
「満6歳11カ月~満6歳」の児童が入学する現行より遅くなり、早期教育を進める世界の流れから逆行している、と指摘されていました。
9月入学制度になったら卒業式はどうなる?
9月入学制度になったら、卒業式は7月上旬に行うことが考えられます。
現在の3学期制の学校の長期お休みと、卒業式のパターンは次のような感じです。
・1学期:4月上旬~7月下旬まで
・2学期:9月はじめ~12月下旬まで
・3学期:1月上旬~3月下旬まで
卒業式は、3月上旬
このパターンのまま、学期をひとつづつ後ろへずらした場合、つぎのようになります。
・1学期:9月はじめ~12月下旬まで
・2学期:1月上旬~3月下旬まで
・3学期:4月上旬~7月下旬まで
この場合、卒業式は、7月上旬に行うことになります。
9月入学制度の世界や海外の様子は?
海外の様子は次のとおりです。
同じ国でも、州や学校により違うことも多いため、例としてご覧ください。
国名 | 学校年度 | 年齢基準日 |
---|---|---|
アメリカ (ニューヨーク州) |
9月~6月 | その年の12月31日までにその年齢になる子がその年の9月に入学 |
アメリカ (ワシントン州) |
9月~6月 | その年の8月31日までにその年齢になる子がその年の9月に入学 |
アメリカ (カリフォルニア州) |
8月中旬~5月下旬 | その年の9月1日までにその年齢になる子がその年の8月に入学 |
イギリス | 9(8月末)月~7月 | その年の9月1日までにその年齢になる子がその年の8,9月に入学 |
オーストラリア (ニューサウスウェールズ州) |
1月~12月 | その年の7月31日までにその年齢になる子がその年の1月に入学 |
中国 | 9月~6,7月 | その年の9月末までにその年齢になる子がその年の9月に入学 |
韓国 | 3月~2月 | その年齢になる日が属している年の翌年の3月1日に入学 |
9月入学制度のメリットやデメリットは?
9月入学制度の
・メリット
・デメリット
については次のようなことがあります。
メリット
・世界標準の秋入学に合わせることができ、留学に行きやすい・留学を受け入れやすくなる。
・受験時期が冬から初夏~夏に変わるため、雪での交通機関の乱れや、インフルエンザで受験できない、などの心配がなくなる。
・現在、勉強を進められている子と、そうではない子との格差の広がりが心配されている。9月入学にすることで、足並みを揃えることができる。
・現在高校3年生にとって、最後の高校生活を楽しめるチャンスが広がったり、入試についての不安や混乱が和らぐというメリットが多い。
デメリット
・そもそも9月になったら、学校に登校できるようになるとは限らない。
・学校生活が辛いなどの理由で、早く卒業・進級したい子にとっては、辛い時期が約半年延びてしまう。
・高校生や大学生では、学費や生活費が余分にかかる。(支援策はあるかもしれないが、あまりあてにできない)
・卒業と働きはじめが遅れることになり、得られるはずだった収入がなくなる。
・社会的には半年間卒業が遅れることで、労働力が不足する。
・制度改正には法律改正が必要で、この騒動で慌ただしい中、法律改正をして制度を変えて、現場は準備してということは大変。
・さくらの花の時期に卒業、入学が出来なくなり、卒業や入学でさくらについての歌が歌えなくなる。
今、4月入学でずっとやってきた日本の教育にとっては、大きな岐路となっています。
今後の動きにも注目していきたいです。
お読みいただきありがとうございました。